チャプター 60

エル視点

私はしっかりとノックして、ドアを開けた。中に足を踏み入れた途端、部屋に満ちる緊張感が肌を刺した。

「おはよう、ブラッド……カーターさん」私は小声で言った。自分でも意図した以上に、ためらいがちな声になってしまった。

レイモンド・カーターの視線がすぐに私を捉え、紛れもない興味をたたえて、じっと私に注がれた。その表情には、私を不快にさせる何かがあった。まるで私を通して、誰か別の人を見ているような……。居心地が悪くなって、私はブラッドの方に助けを求めるように視線を向けた。

ブラッドの顎の筋肉が、ほとんど気づかないほどわずかにこわばった。彼の視線がレイモンドと私の間を素早く行き来する。...

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