チャプター 79

エル視点

夜の空気はひんやりとしていて、ブラウスの下で胸にかかる指輪の重みを感じた。

一刻も早く家に帰りたくて、私は駐車場に急いだ。だが、自分の駐車スペースに着いた途端、ぴたりと足を止めた。

空っぽ。――まったくもって、空っぽだった。

私はがらんとしたその空間を丸一分も見つめ、何が起きたのかを理解しようと努めた。

「すみません」巡回中の警備員に声をかける。「四十七番に車を停めていたんですが。どうなったかご存知ですか?」

こめかみに白髪の混じった中年の人狼であるその警備員は、私に気づいたような、それでいて気まずそうな表情を浮かべた。「ウェストさん、本日、アルファ・レインがあなたの車を...

ログインして続きを読む