チャプター 9

エル視点

人狼の医師が、私の最新の検査結果を確認しながら、ペンを走らせてカルテに何かを書き込んだ。

「ウェストさんの容体は完全に安定しました」医師はそう告げると、報告書を私ではなく、ブラッドに直接手渡した。「母子ともに順調です。いつでも退院可能ですよ」

まるで私が部屋にいないかのような扱いに、私は唇を噛んで耐えた。医師は診察中、一度も私を見ようとせず、すべての説明をブラッドに向けていた。まるで私が、大切なアルファの跡継ぎを運ぶための単なる「器」でしかないかのように。

ブラッドの琥珀色の瞳が素早く報告書を走査するが、その表情からは何も読み取れない。彼は無言のまま、書類をエリザベスに渡した...

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