チャプター 99

エル視点

二歩も歩かないうちに、がっしりとした手に手首を掴まれ、その場に足を止めさせられた。

「行くか残るか決める前に、俺の話を聞くべきだ」レイモンドは静かに言った。その握力は優しく、それでいて抗うことのできない力強さがあった。

肌に触れる彼の指先の感触に、予期せぬ震えが体を駆け抜ける。彼の青い瞳に何かが揺らめいたのが見えた――まるで彼も何かを感じたかのような、一瞬の動揺。ほんの一瞬、彼の落ち着き払った表情がぐらついた。

『一体、何が起こってるの?』

私は彼の直視を避け、凍りついたように立ち尽くした。「カーターさん、あなたはレイン・グループと提携したばかりでしょう。それで今、アルファ...

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