第五十四章

兄が勧めてきたこのクラブをエリオットが一言で表現するとすれば、それは「熱い」だった。

単に蒸し暑く、汗の匂いが充満しているからだけではない。そこに集う人間たちが醸し出す熱気のせいだ。

店内に足を踏み入れた瞬間、煙草の煙が肺を満たした。このクラブは異質だった。これまで訪れたどの場所よりも刺激が強かったのだ。

辺りはLEDライトの点滅に合わせて色を変える煙で霞んでおり、視界がぼやけていた。主な照明は霞がかった青と紫で、それがクラブ全体をまるで媚薬に浸したかのような妖しい空間に変えていた。

バーカウンターでは、バーテンダーたちがシェイカーを振り、酒を作りながら客を口説いている。

ダンスフロアに...

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