チャプター 163

フレイヤ視点

荷造りを終えた朝の空気には、松の香りと、これから始まることへの予感が漂っていた。

荷物はシンプルにまとめた。必需品と数着の着替えだけだ。戦士の訓練キャンプに、華美なものは必要ない。

私は髪を実用的な高いポニーテールにまとめ、メイクは一切しなかった。今日求められているのは効率であって、美しさではない。一番動きやすいアウトドアウェアに着替え、バッグを掴んで階下へと向かった。

リビングではアレクサンダーが待っていたが、階段の上に姿を現した私を見るなり、彼は完全に動きを止めた。

階段を降りる私の一挙手一投足を、彼の視線が追っているのがわかる。その眼差しにはいつもと違う何か――私...

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