チャプター 4

アレクサンダー視点

「もういい、二人ともやめろ」

俺はフレイヤの警告を退け、ティファニーに手を貸して立たせた。「大丈夫か?」

俺はティファニーを背にかばった。フレイヤとの距離は、互いの呼吸が聞こえるほど近かった。俺は混乱していた――初対面のはずなのに、彼女からは妙に懐かしい感覚がするのだ。

五年前、俺は何者かに特殊な媚薬を盛られ、嗅覚と視覚を奪われたことがあった。だがティファニーは、あの夜、自分の身を捧げて毒を中和し、俺を救ってくれたと言った。

彼女が俺に嘘をつくはずがない。そうだろ?

ティファニーは首を横に振った。「私は平気、ただ……」

彼女は言葉を切り、目を輝かせた。

「アレックス、彼女は試験内容を盗んだに違いないわ! そうでなければ、あんな短時間でこれほど完璧なデザインができるはずがないもの。構想を練るだけでももっと時間がかかるはずよ! 完成させただけでなく、デザイン哲学まで確立されていた。これこそ事前の準備があった証拠だわ! 会社に置いておくわけにはいかない。でも……」

ティファニーは続けた。「もし彼女が今ここで、あなたを満足させるものを即興で作れるなら話は別よ。そうでなければ、入社する資格なんてないわ!」

ティファニーの理屈は一見もっともだった。もしフレイヤが本当に試験内容を盗んでいたのなら、準備なしで実演を迫られれば、プレッシャーで自滅するだろう。

だが、俺の決断を後押ししたのは別の理由だった。目の前に立つこの女――反抗的で、決して折れないその姿は、ティファニーが語っていた「哀れな女」とは似ても似つかなかった。どちらが真実なのか、見極める必要があった。

「つまり、先ほどの試験は無意味だったということですか? それとも、御社は前言を撤回し、才能ある人間に敬意を払わないと?」フレイヤは即座に言い返した。

ティファニーは自説を曲げなかった。「私たちの前でデザインする度胸がないなら、それは本当に内容を盗んだという何よりの証拠よ。それに、この手の情報は機密扱いじゃないもの。金を積めば誰かが漏らすわ。フレイヤ、お姉ちゃん、素直に謝れば、アレックスも私も許してあげるから」

フレイヤはティファニーの言いがかりに取り合うことすらせず、ただ腕を組んだ。「もし私が何かを作り上げ、あなたたちの誹謗中傷が間違いだと証明したら、その時はどうなるの?」

俺はティファニーの体が強張るのを感じた。

「俺を満足させるものを作れ。そうすれば今日のことは不問に付す」俺は冷ややかに言った。

「だが、もしできなければ……」俺はフレイヤの前に歩み寄り、アルファとしての威圧感を全開にして彼女を見下ろした。「俺の怒りを買うことになる」

これほど近くに立つと、あの奇妙な既視感が物理的な衝撃となって再び俺を襲った。彼女の香り、その存在感――何かが、掴めそうで掴めない記憶を刺激する。五年前の夜のことは苛立つほど曖昧なままだが、フレイヤのそばにいると、潜在意識の奥底にある何かが揺さぶられるのだ。

沈黙が続いた。普通の人間なら、即座に承諾するか、言い訳を並べ立てる頃合いだ。彼女の躊躇いには、何か意味があるはずだ。

「ティファニー、秘書に警察へ連絡させろ。暴行事件が起きたとな」

「はい、アレックス」

彼女が秘書を呼びに行こうとしたその時、フレイヤが口を開いた。「受けましょう。ですが、私はすでに一度試験に合格しており、会社の規定によれば採用条件を満たしています。この二度目の試験に合格した場合、私にはどんなメリットがあるのですか?」

くそっ。追い詰められてなお、交渉するだけの冷静さがあるとは。これは必死な人間や後ろめたい人間の態度ではない――計算された自信だ。

「もし俺を満足させるものを作れたら、給与を五割増しにし、管理職として迎え入れよう」俺は提案した。

フレイヤは微笑んだ。「私は金のためにクラウン&ジェムに来たのではありません」

「条件が不服か?」俺は困惑した。

「マイ・アルファ、金で私を侮辱するおつもりですか? それとも私が金に困っているとお思いで?」

彼女が口にした「私のアルファ」という言葉に、予期せぬ衝撃が背筋を走った。そして、金に対するあの無関心さ――大芝居を打っているのか、あるいは俺の知らない強大な財力を持っているのか、そのどちらかだ。

「クリスタルさん、もし俺を満足させるものが作れるなら、望みのものを何でも言ってみろ!」俺は最後の条件を提示した。

「そちらの女とあなたは私を侮辱しました。謝罪を要求します。彼女に関しては、私の父の私生児であることを考慮して、跪いて謝るなら許してあげましょう」

彼女の言葉には、アルファの血統特有の支配力が滲み出ていた。

俺の眼差しは冷ややかになった。よくもそんな要求ができたものだ。

ティファニーは「俺の女」ではない。それはフレイヤの思い込みだ。だが、俺は五年前にティファニーに借りを作っており、二人の実際の関係はどうあれ、誰かが彼女を辱めようとするのを黙って見過ごすわけにはいかなかった。

俺が口を開こうとしたその瞬間、ティファニーが先に声を上げた。「いいわよ! もしアレックスを満足させるものが作れなかったら、あなたは犬みたいに四つん這いになって、『クラウン&ジェム』から這い出ていくのよ!」

ティファニーの声に含まれた悪意に、俺は不意を突かれた。俺が知っていると思っていた、あの穏やかで物静かな女性はどこへ行ったんだ?

「交渉成立ね」

フレイヤはそれ以上何も言わず、ノートパソコンを取り出してデザインを始めた。

「また私が不正をしたと言いがかりをつけるために、このパソコンは自分のものだなんて言い出さないでしょうね?」フレイヤは俺を見た。

「俺がずっと見張っていてやる。始めろ」と俺は言った。

「結構。それこそ私の望むところよ」フレイヤはデザインに着手した。

彼女の仕事ぶりには目を奪われた。指先は慣れた手つきでキーボードの上を舞い、その一挙手一投足には迷いがなく、自信に満ちている。これは運やまぐれ、あるいは盗作などではない――純粋で、否定しようのない実力だ。彼女に対して抱いていた勝手な憶測が、音を立てて崩れ去っていくのを感じた。

またしても三十分で、デザインは完成した。

俺はそのデザインを詳細に検討した。「非常にエジプト風のスタイルだな」

「その通り。エジプトからインスピレーションを得ていますが、私たちの世界にある神秘的な要素も取り入れています」フレイヤの唇に、誇らしげな笑みが微かに浮かんだ。

「素晴らしい出来だ。欠点が見つからない。この作品の名は?」

面目を保つためにあえて難癖をつけることもできただろうが、それでは器の小さい暴君と変わりがない。それに、もし彼女が本当にこれほどの才能を持っているのなら、『クラウン&ジェム』が抱える問題もついに解決するかもしれないのだ。

「この作品のコンセプトは、彼女に密接に関係しています。まさにおあつらえ向きと言ってもいいでしょう」フレイヤはティファニーを指差した。

意味が分からない。今日これだけの騒動があった後で、なぜフレイヤはティファニーをイメージした作品を作ったんだ?

どういうことだ?

ティファニーが俺の横に歩み寄り、作品をじっくりと眺めた。「本当に素晴らしいわ」

「あなたが歩み寄る気があるなら、私だって意地悪はしたくないわ。ただ誠心誠意謝ってくれれば、許してあげるし、『クラウン&ジェム』への入社も認めてあげる」

フレイヤは彼女を無視し、独り言のように言った。「この作品の名は『クレオパトラ七世』よ」

その名前を聞いた瞬間、頬を張られたような衝撃を受けた。その名が持つ意味を理解できるだけの歴史の知識は俺にもある。フレイヤの企みが、突然手に取るように分かった。

「そんな舌を噛みそうな名前が、どうして私に関係あるのよ? フレイヤ、私たちを馬鹿にしてるんじゃないでしょうね? 『クラウン&ジェム』は平気で嘘をつくような人は雇わないわよ」ティファニーは作品に見惚れながら言った。

「もちろん関係あるわ! クレオパトラ七世はエジプトの女王で、絶世の美女として名高い人物よ」

それを聞いて、ティファニーは目を輝かせた。

俺は笑いをこらえるのに必死だった。フレイヤはこれから言葉による戦争の真髄を見せつけようとしており、ティファニーはまんまとその罠に足を踏み入れている。

フレイヤは蔑むように笑った。「この女王は最初にカエサルを誘惑し、彼の死後はその義理の息子まで誘惑したの。とんだあばずれ女、と言えるわね!」

「この作品にはもう一つの名前があるわ。『淫蕩』よ! 本当にあなたにぴったりだわ」

フレイヤの一撃は外科手術のように正確だった。彼女はより効果的に叩き落とすためだけに、ティファニーを持ち上げたのだ。

目の前の二人の女性について俺が知っていると思っていたすべてが、覆ろうとしていた。

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