第四十四章

エルサ

彼女がカウンターの下に手を伸ばしたとき、私の背後で騒ぎが起こった。自動ドアがシューッと音を立てて開き、医療チームがストレッチャーを囲んで駆け込んできた。ロビーを突っ切って救急処置室へと向かう中、医師が指示を叫んでいる。

「道を開けて! 心停止だ、急ぐぞ!」

チームが駆け抜ける際、誰かに乱暴に脇へと押しのけられた。私はよろめき、危うく尻もちをつきそうになる。その拍子に手から滑り落ちたスマホが、嫌な音を立てて床に叩きつけられた。拾い上げると、画面は粉々で、蜘蛛の巣状のひびがディスプレイ全体に広がっている。何度電源ボタンを叩いても、うんともすんとも言わない。

「ちくしょうっ!」私は使...

ログインして続きを読む