チャプター 216

エルサ

「じゃあ、これは何なんだ、エルサ? こっちとしては、今何が起きてるのかさっぱり理解できないんだが」

彼の顔が、私の鼻先数センチの距離にあった。彼の香りが、私の感覚をすべて奪っていく。

私は顎を上げ、彼の視線をまっすぐに見据える。両手は体の横で固く握りしめられていた。「昨日は、感情的になってたの。昨夜のことは……お礼、かな。花火の。私を元気づけようとしてくれたことへの」言葉は舌の上で苦い味になったけれど、それでも無理やり吐き出した。

彼の顔に、暗く怒りに満ちた何かが閃いた。「お礼、か」彼は感情なく繰り返した。その表情は支配者の仮面のように硬化し、瞳が一瞬、金色にきらめいた。「そうか...

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