チャプター 26

ドレイク

姿を見るより先に、その匂いに気づいた。

バニラと蜂蜜、そしてエルサ特有のあの香りだ。廊下を辿りながら、俺の鼻孔が大きく動く。宴会場の喧騒から離れた場所だ。怒りと独占欲が、まるでナイフのように腹の底を抉る。あのクソ忌々しいムーンシャドウのアルファが、一晩中彼女の周りをうろついていたせいで、俺の中の狼が狂いそうだった。

彼女はそこにいた。廊下の突き当たり、開いた窓に向かって背を向けて立っている。冷たい夜風が彼女の金色の髪を撫で上げ、首筋が露わになる。そこには数年前に俺が贈った、繊細な銀の鎖が光っていた。

遠くから聞こえる舞踏会の音楽に足音を紛れさせ、俺は音もなく近づいた。だが、エ...

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