チャプター 61

エレナ視点

私はサングラスをかなぐり捨てた。怒りが野火のように全身の血管を駆け巡る。警備を突破するために施した変装など、もはやどうでもよかった。

「通さないつもり?」私は持っていたバッグとサングラスを、渾身の力で彼に向かって投げつけた。「いいわよ! 今日、子供たちに会わせないって言うなら、このオフィスをめちゃくちゃにしてやるから!」

リチャードは難なく身をかわした。私の投げたものが当たるには、彼の反射神経は鋭すぎたのだ。バッグは壁に激突し、中身が床一面に散らばった。

「エレナ・ウィンター!」彼の声が、壁を揺るがすほどの雷鳴のような怒号となって轟いた。「死にたいのか? 望みとあらば叶えて...

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