第六十八章

リチャード視点

「パパ!」キャシーが声を上げ、最後の数歩を駆け寄ってきた。

俺は身をかがめて彼女の小さな手を握り、もう片方の手をリリーに差し出した。意識的にマックスを無視し、娘たちだけに意識を集中させる。

「家に帰ろう」俺はそう言い、車の方へと体の向きを変えた。

マックスが遅れてついてくる気配を感じる。彼の纏う香りが、感情とともに微かに変化していた。

「パパ」突然、リリーが俺の手を振りほどいて言った。「どうしてマックスを無視するの?」

キャシーも俺の手を放した。普段は感情を表に出さない彼女の顔に、珍しく非難の色が浮かんでいる。

「パパ、マックスも家族よ。彼だけ違う扱いをするのはよ...

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