チャプター 90

エレナ視点

処置を続けるにつれ、モニタリング機器の数値は徐々に安定し、緊迫していた電子音も規則的なリズムへと変わっていった。

「その調子よ」ベッドの反対側から、ニーナが静かに声をかけてくる。

私は目を閉じ、意識を集中させて治癒のエネルギーを送り込んだ。

やがて患者の顔色に赤みが戻り始め、呼吸も深く、穏やかなものになった。

ニーナが私に向かって親指を立ててみせる。「見事な手際ね、ウィンター先生」

安堵感が波のように押し寄せた。少なくとも、今日は何か一つくらい上手くいったのだ。私は一歩下がり、看護師たちが点滴を調整できるように場所を空けた。「今後数時間は経過観察が必要ですが、峠は――」...

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