ブラッドバスとディックキックス

サイラス

「どうして、あの戦いで見たことを全部、セインに話さなかったの?」ファイアボールが足から足へと軽く重心を移しながら尋ねた。俺が見逃さない癖だ。

ファイアボールは、俺を跡形もなく蹴り飛ばそうとする直前、決まって重心をずらす。鋭く突き刺すような視線がちらりと揺れ、俺の一挙手一投足を計算しているのがわかるほど、反射神経は常人離れしていた。俺は自信たっぷりに、揺るぎなく立つ。飛びかかる寸前の捕食者みたいに。彼女の注意を浴びるだけで、胸の奥の狼が震えだす。こんなふうに血を歌わせるのは、彼女以外にいない――執着と飢えに満ち、どうしようもなく彼女を求めてしまう。

「話さなかったのは、お前に俺を...

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