「ありがとう。」

アイラ

式の開始が目前に迫り、私は緊張で吐き気をこらえるのに必死だった。何か別のことに集中しようと、手のひらに爪を食い込ませる。私はステージ上でセインの隣に座り、その反対側にはレイヴンがいる。レイヴンは退屈そうな顔で爪をいじっている。私も彼女のように平然としていられたら、と願わずにはいられない。彼女はぴったりとした革のパンツに、長袖の白いボタン付きブラウスを合わせている。けれど、ボタンはいくつか留め忘れているようだ。もっとも、最前列に座って彼女――彼のメイト――から片時も目を離さないサイラスは、気にも留めていない様子だが。

群衆は会釈したり、手を振ったり、お辞儀をしたりしてから席に着いてい...

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