第227章

 うつむき加減の彼女は、震える手をそっと伸ばした。

 男の手に触れ、彼がいつも与えてくれる温もりと優しさを求めて。

 だが今回ばかりは、藤原光弘の反応は冷徹そのものだった。

 迷いなく、彼女の手を払いのけたのだ。

「事ここに至って、まだしらばっくれる気か?」

 藤原光弘の瞳は暗く沈殿し、全身から上位者特有の威圧と覇気が立ち昇る。その圧倒的なプレッシャーに、水原春は心臓が早鐘を打つのを感じた。

 理解できない。

 ついさっきまで、藤原光弘は彼女の手を握り返そうとし、自ら口づけさえしてくれたではないか。

 それが瞬きする間の出来事で、世界が反転してしまった。

 今の彼は、会社で...

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