第231章

 棠花はそこでようやく胸を撫で下ろすと、その視線を自然と藤原颯の顔へと向けた。藤原光弘とあまりにもよく似た、その顔立ちへ。

 自分が愛しているのは、いつだって光弘だということは痛いほど分かっている。

 けれど、颯兄さんが纏う優しさと知的な穏やかさは、不思議な感覚を呼び起こすのだ。まるで、光弘が決して見せることのない「あり得たかもしれない」もう一つの側面を見ているような――。

 二人の容姿は七、八割方似通っているというのに、その気性も性格も、まるで正反対と言っていいほど掛け離れていた。

 いけない、また颯兄さんの面影に光弘を重ねてしまっている――そう自覚した棠花は、慌てて視線を逸らし、...

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