第235章

 藤原グループ、社長室。

 藤原光弘は革張りの重厚なオフィスチェアに深く体を預け、眉間を強く揉みほぐしながら、深い疲労感を滲ませていた。

 変装までしてあのスイーツ店に潜り込んだのは、もともと秋山棠花の後をつけ、彼女と『楓兄さん』が密室で何を話しているのかを探るためだった。だが、水原春が現れたせいで、単なる偵察が『世間を揺るがすスキャンダル』へと変貌してしまったのだ。

 現在、ネット上は「妊娠中の妻がいるにもかかわらず、水原春と密会に及んだクズ夫」という三流ゴシップ記事で埋め尽くされている。

 罵詈雑言の嵐だ。

 唯一の救いは、秋山棠花が騒ぎに巻き込まれることなく、早々に現場を去っ...

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