第240章

 アンエイの手腕に対し、秋山棠花は全幅の信頼を置いている。

 あいつは仕事に関しては一切の無駄がない。その反面、性格や気性はどこか捉えどころがなく、思考の飛躍も激しい。

 そんな彼が「自分で見ろ」と言ってきたのだ。きっと口で説明するよりも、彼女自身の目で確かめてほしい何かがそこにあるのだろう。

「資料は届いたわ。他にある?」

 秋山棠花が電話を切ろうとしたその時、受話器の向こうから唐突に真剣な声が返ってきた。

「あるぞ」

 秋山棠花は一瞬、呆気に取られた。普段のアンエイなら誰よりも素早く通話を切るはずだというのに、今日は一体どうしたというのか。

 いつもこれだ。言いたいことがあ...

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