第245章

「日向院長は医学界の至宝と聞き及んでいます。これを見れば、何かお分かりになるでしょう?」

 高橋久弥は遠慮のかけらもなく、その物体を日向琴葉の目の前に放り出した。真贋をその目で見極めろと言わんばかりに。

 透明な薬包ごしに、その錠剤は鮮明に日向琴葉の目に焼き付いた。

 長年の医学知識と臨床経験が、瞬時にその正体と危険性を弾き出す。

 エトルフィン。

 人工合成された超強力な鎮静・鎮痛剤であり、毒性は極めて強く、同時に依存性も高い。

 量を誤れば、あるいは用途を間違えれば、人を死に至らしめる劇薬だ。

 琴葉の顔色が、さっと強張った。

 まさか藤原家の側近ごときが、これほど危険な...

ログインして続きを読む