第246章

「本当に?」

 水原春は彼の胸から顔を上げ、その瞳の奥にある優しさと深情を覗き込んだ。心は温かいもので満たされる。

 だが、そう感じれば感じるほど、彼女の欲望は貪欲に膨れ上がっていく。

 彼を完全に自分のものにしたい。彼に自分だけを愛してほしい。

「光弘……」

 彼女は彼の懐で甘えながら、悪戯な指先を彼の心臓の上へと這わせた。

「さっきみたいな言葉、他の女にも言ったことあるの?」

 彼が他の女をこうして抱きしめ、根気強く慰めていたかもしれないと想像するだけで、心臓を針で刺されたような痛みが走り、嫉妬で気が狂いそうになる。

 もしこの時、藤原光弘の口から『秋山棠花』という名が出...

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