第250章

 藤原光弘と水原春の噂は、すでに至る所に広まっていた。今の彼女にとって、彼との関わりなど御免だった。

 お互い、一生顔を合わせずに済めばそれが一番だ。

 見ただけでイライラするのだから。

 車のエンジン音と共に、藤原光弘の切迫した声が響く。

「秋山棠花、お前今、『オル』というサロンにいるな?」

「あんた……」

 秋山棠花は一瞬呆気にとられたが、すぐに状況を理解し、声を低くして問い返した。

「藤原光弘、私を監視してるわけ?」

 以前、彼が変装してスイーツ店まで尾行してきたことを思い出し、秋山棠花は強烈な嫌悪感を覚えた。

 そして今、また人を遣って彼女を見張らせている。

 理...

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