第336章

彼と一緒にいたのは、兄の藤原颯だった。

二人の容姿は瓜二つと言っていいほど似ていたが、それでも彼女は一目で見分けることができた。あの日、自分が海から救い出したのが誰だったのかを。

そして、その日になってようやく思い出したのだ。祖父に引き取られる前、二人にはすでにかすかな面識があったことを。

あの日家に帰ってから、彼女の胸には一つの思いが芽生えていた。

――藤原光弘に嫁ぐということ。

彼女は祖父や叔父たちを必死に説得し、藤原光弘こそが生涯ただ一人の相手だと信じ込んだ。彼以外には嫁がない、と。

だが、その後に起きた全ての出来事は、彼女の一方的な思い込みに過ぎなかった。命を救ったことを...

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