第346章

 二人が躊躇しているのを見て、佐藤玲が一歩前に進み出た。彼女は秋山棠花の手をしっかりと握りしめる。

「田中さん、この子は私に任せて。安心してください」

「必ず無事に連れて帰ってきますから」

「……分かりました」

 田中は頷くしかなかった。

 田中だけでなく、親友である佐藤玲がついているのなら、日向琴葉もこれ以上口を挟む幕ではない。彼女は二人に軽く会釈をすると、部屋に戻って休息をとることにした。

 柏原弥希を招くために奔走したこの二日間、彼女もまた、ろくに休んでいなかったのだ。

 一方、秋山棠花と佐藤玲は並んで霊堂の方へと歩き出した。

 霊堂に到着すると、予想通りそこには安田延...

ログインして続きを読む