第349章

 安田礼は、彼女の頭を優しく撫でた。これ以上、彼女が悲しみに沈んでいるのを見ていられなかったのだ。

「棠花。藤原光弘とはもうすぐ離婚するんだ。この子がいなくなったことで、お前たちの縁は完全に切れる。……実は、これで良かったのかもしれない。お前はまだ若い。これからは自分だけの新しい人生が待っているし、藤原光弘につきまとわれることもなくなる」

 安田家の人間は誰ひとりとして、藤原光弘を良く思っていない。

 あんなクズ男、棠花が離婚した後も関わりを持つなど真っ平御免だ。

 だが、もし子供を残していたら、二人の関係は一生断ち切れなかっただろう。今こうして子供がいなくなったことは、棠花にとって...

ログインして続きを読む