第491章

 秋山棠花は深く息を吸い込み、意を決して立ち去ろうとした。その時、扉の外で不意に足音が響いた。

 心臓が早鐘を打つ。

 次の瞬間、彼女のすぐ傍にある扉がノックされた。

 薄い扉越しに、藤原光弘の低く、そして聞き慣れた声が鼓膜を震わせる。

「秋山棠花、中にいるのは分かっている。開けてくれ。話がある」

 秋山棠花は呆然と立ち尽くした。

 一体どうやって、藤原光弘は彼女の居場所を突き止めたのか。日向琴葉が情報を漏らすとは考えにくい。

 だが現に、彼は扉一枚隔てた向こう側にいる。押し開ければすぐにでも入ってこられる距離だ……隠れる場所など、どこにもない。

 秋山棠花の胸の鼓動は、痛い...

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