第497章

その一件を思い出すだけで、日向琴葉は腹の底から湧き上がる不満を抑えきれなくなる。

高橋久弥が急いで彼女を帰したのは、ひと晩ゆっくり休ませたいという彼なりの気遣いであることは分かっている。それに相手はかつての上司であり、彼が断りきれない立場であることも理解していた。

けれど、彼女こそが彼の恋人なのだ。

彼の未来において、最も重要な存在になるはずの人間ではないか。

それなのに高橋久弥ときたら、元上司一人のために彼女をあっさりと追い返し、あまつさえ、あのクズ男・藤原光弘の肩を持つような真似をするなんて。

これではまるで、自分が物分かりの悪い女みたいではないか。

たかが元雇い主が、未来の...

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