第512章

「そう?」

 秋山棠花は冷ややかな笑みを浮かべると、きつく縛り上げられた自身の体を顎でしゃくってみせた。その声色には、痛烈な皮肉が滲んでいる。

「私をモノみたいに雁字搦めにして、好き勝手に玩ぶ……これが、あなたの言う『愛』なの?」

「まさか、誘拐を指示したのは自分じゃなくて、私が自ら望んでここに来たとでも言うつもり?」

 彼女の言葉は、一語一句が嘲弄に満ちていた。

 藤原颯という男が、その頭の中で何を考えているのか、彼女には到底理解できない。

 安田家の権力と支援を得るために自分を利用しようとしているくせに、それを認める度胸すらない。あろうことか、その薄汚い欲望を「愛」という美名...

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