第516章

藤原光弘は、焦燥感に駆られるまま足を急がせていた。

秋山棠花の今の様子は、明らかにあの手の薬を盛られた反応だった。

呼吸の乱れ方からして、薬が回り始めてからすでに時間が経過している。

一刻も早く病院へ運び、解毒処置を受けさせなければ、身体への負担は計り知れない。何しろ、あの種の薬は性的な行為でしか解消できないと言われている類のものだ。

それなのに、薬を盛った張本人が忽然と姿を消したとは。

藤原光弘は疑念を抱かずにはいられなかった。藤原颯はいったいどんな電話を受けたというのか。秋山棠花を置き去りにしてまで優先すべき用件だったのか、と。

もっとも、奴がいなくなったのは不幸中の幸いだ。...

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