第518章

 安田延司は腹を決めると、もはや藤原光弘に対して語るべき言葉を持たなかった。

 手を軽く振り、先ほどの佐藤玲に対するそれと同様、彼にも退出を促す合図を送る。

「今日のことは……そうだな。棠花が無事に戻れたのは、間違いなく君のおかげだ。安田家を代表して、そして棠花の親族として礼を言う。だが、君と棠花はもう離婚した身だ。これ以上ここに長居するのは筋が通らん。帰ってくれ」

 その言葉には、礼儀正しさの中に、決して踏み込ませない冷徹な拒絶が含まれていた。

 藤原光弘をあくまで『他家の客』として扱い、秋山棠花との縁を完全に断ち切ろうとする意志の表れだ。

 感謝はする。だが、秋山棠花と藤原光弘...

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