第521章

藤原光弘は言葉を詰まらせた。顔を上げ、祖父の老いさらばえた瞳を前にすると、どうしても真実を告げるのがためらわれたのだ。

彼は唇をきゅっと引き結び、こう言った。

「眠れなくてね。いっそのこと、お祖父様の顔でも見に来ようと思ったんだ」

「お祖父様、医師も言っていたよ。術後の経過は順調だって。危険な時期さえ乗り越えれば、家でゆっくり静養できるから」

誰よりも祖父の回復を願っているのは、間違いなく彼だった。

だが、光弘は忘れていた。自分が、この祖父の手一つで厳しく育て上げられた孫だということを。

彼の些細な違和感など、藤原家の当主たる祖父には一目瞭然なのだ。

「馬鹿者、誤魔化せると思う...

ログインして続きを読む