第588章

大して力など込められていなかったが、相手が誰かに気づいた藤原光弘は、大人しく椅子に腰を下ろした。

秋山棠花の顔へと柔らかな視線を落とし、小さく微笑む。

「棠花、俺は平気だ。ちょっとした用事を済ませてくるだけだから、すぐ戻る……」

秋山棠花は光弘の体が心配でたまらなかった。先ほど入ってきた時、彼の顔色はぞっとするほど蒼白だった。今一番必要なのはしっかり休むことであり、機械のように動き続けることではない。

だからこそ、彼女は彼を支えようと決めた。

「話は全部聞いていたわ。お爺様が生前よく着てらした服なら私も知っているから、執事と一緒に裏へ行ってくる。あなたはここで座って休んでいて。後で...

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