第608章

秋山棠花は去った。

その足取りは固い決意に満ちていた。藤原光弘を一度も振り返ることなく、弁明の言葉すら聞こうとはしなかった。

藤原光弘は魂を抜かれたようにその場に立ち尽くし、遠ざかる彼女の後ろ姿を見つめながら、複雑で切ない思いを噛み締めていた。

彼女が突然別れを切り出した理由は、見当がついている。

だが、だからこそ余計に胸が痛むのだ。

秋山棠花がどれほど家族の絆を大切にしているか、彼は誰よりも知っている。

かつて、彼女は祖父を心の支えにして生きてきた。その祖父がこの世を去った今、安田家の叔父たちこそが彼女に残された唯一の肉親だった。

しかし、問題はまさにそこにあった。

五人い...

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