第610章

「藤原光弘」というその名を聞くのは、八ヶ月ぶりのことだった。再び耳にした瞬間、秋山棠花の心は思わず震えた。

 彼女は必死に内なる感情を押し殺し、かぶりを振った。

 この間、彼女の意識は胎児を育むことと会社の経営にのみ向いており、藤原光弘が安市にいないことなど知る由もなかった。ただ、自分を避けているだけなのだと思っていた。

 まさか、海外に行っていたなんて……

 その様子を見て、日向琴葉は言葉を継いだ。

「藤原家が南アフリカで鉱山開発のビッグプロジェクトを動かしてるの、知ってるわよね?」

 秋山棠花は頷いた。

 その件については、彼女も承知していた。

「でも、そのプロジェクトな...

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