第62章

道中、秋山棠花はずっと声を押し殺しており、車内の雰囲気は徐々に微妙なものになっていった。

ようやっと目的地に到着し、車を降りようとしたその時、秋山棠花は外の様子を見てふと固まった。

藤原光弘は入り口からまだ数十メートルも離れた場所に車を停めていた。

「どうして地下駐車場に入らないの?」

秋山棠花は眉をひそめた。

ここから歩いていけば、あまりにも目立ちすぎる。

藤原家の人間に、藤原光弘と二人で「仲睦まじく」出入りするところを見られて、誤解されたくはなかった。

藤原光弘はシートベルトを外した。「入っちまったら、どうやっておしどり夫婦の芝居を打つんだよ」

秋山棠花は...

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