第63章

秋山棠花は無意識に隣の男を見やった。その瞳には、甚大な驚きが浮かんでいる。

しかし、藤原光弘は平然とした表情で、明らかにこの契約書について知っていた様子だ。

秋山棠花はますます訳が分からなくなる。

藤原光弘がこの後継者という地位をどれほど重んじているか、他の者は知らずとも、彼女は知っていた。

この三年間、彼は社長の座を確固たるものにするため、ほとんど全ての時間を仕事に費やしてきた。だからこそ、お爺様も満足してグループを彼に託したのだ。

それなのに、今の彼は一言も発しないなんて……。

「棠花、目を通したらサインしなさい」

藤原お爺様に促され、後ろに控えていた秘書が目...

ログインして続きを読む