第65章

その説明を聞いて、秋山棠花はようやく頷いた。

室内にいる三人のうち、彼女だけが席に座っている。それもオフィスの一番奥まった主人の席だ。目の前の秋山柔子を、値踏みするような強い視線でじっと見つめている。

秋山柔子は彼女の視線を意に介さず、藤原光弘の言葉の方を気にしていた。

どうしてあんな言い方ができるの?

長年、佐藤芳子のそばにいて、彼女も多少は理不尽なやり方を覚えてきた。たとえ自分に不利なことであっても、その口先三寸で一縷の望みを掴み取ることができる。

彼女は幼い頃の話を続けた。「じゃあ、その後路地裏で私を助けてくれたこと、私をいじめてた人たちを追い払ってくれたこと、こ...

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