第66章

藤原光弘は電話などまるで意に介さず、頭を下げて秋山棠花の唇に口づけた。

有無を言わせぬ覇気のある気配が彼女の口腔内へと侵入してくる。

秋山棠花が力ずくで彼を突き放さなければ、危うく丸呑みにされるところだった。

その番号を目にした瞬間、秋山棠花は意外に思った。

電話は秋山宏章からだった。

藤原光弘がまた勝手な真似をしないように、彼女はためらわず通話ボタンを押した。「用件は何?」

「この人でなしが! それが父親に対する口の利き方か! 今すぐ家に転がり込んでこい! 妹に謝罪しろ!」

秋山宏章は開口一番罵り、立て続けに責め立ててきた。

その甲高い声は、耳が痛くなるほど...

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