第696章

秋山棠花が振り返ると、藤原光弘が小首を傾げながら優しい顔で彼女を見つめていた。彼女のきょとんとした表情を見るにつれ、その瞳の奥にある笑みは徐々に深まっていった。

彼女の脳裏にふと白い光が閃き、遅ればせながら彼が言った言葉の意味を理解した。

胸の奥がじんわりと温かくなる。

彼を見上げた。その漆黒の瞳に映る自分の姿と、底知れぬ愛情を湛えた眼差しを見つめていると、自然と口角が上がった。

「光弘、今日は一緒に来てくれてありがとう」

かつての彼女なら、彼がいつか自分を骨の髄まで愛し、彼女のためならどんなことでもするようになるとは、想像すらできなかっただろう。

あの頃はただ、彼と穏やかな日々...

ログインして続きを読む