第703章

やはり、身の回りの怪しい人間など信じるべきではなかったのだ。

秋山棠花がぼんやりとした意識の中からゆっくりと目を開けると、自分が古びた倉庫に閉じ込められていることに気づいた。両手は後ろ手に縛られ、身動き一つとれない。

この既視感のある状況を、彼女は嫌というほど理解していた。

――誘拐されたのだ。

相手が周到な準備をしていたことは明白だった。でなければ、あの絶妙なタイミングで藤原光弘の名を騙り、彼女を誘い出すことなど不可能だ。

だが、一体誰の仕業なのか。

すぐには見当もつかなかった。

彼女の脅威となり得るエイドリ家の当主は既に投獄されている。残された一族の者たちは今頃、血で血を洗...

ログインして続きを読む