第712章

「それに、棠花は今中にいるんだ。もし彼女の耳に入ったら、どうするつもりだ」

 その最後の一言が、二人の動きを見事に止めた。

 安田延司は険しい顔つきのまま、診察室に入ったばかりの秋山棠花の方へ視線を巡らせ、少し考えた末にぐっと堪えた。

 安田礼は不満げに顔を歪めた。

「朔也、お前は一体どっちの味方なんだ。藤原光弘のあの野郎、少し痛い目を見せてやらなきゃ、自分の立場も分からねえだろうが」

 安田朔也は彼を脇へ引き寄せ、宥めるように説明を始めた。

「礼兄さん、気づかなかったのか。さっき棠花がずっと僕らに話しかけていたのは、この件で僕らが藤原光弘を責めないようにするためだ。もし彼女が出...

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