第782章

その点について、安田時也は一度たりとも疑ったことはなかった。

彼が好きになった人は、決して臆病者などではない。

こと恋愛においては、彼自身よりも北野薫のほうがよほど勇敢だった。

共に過ごす日々の中で、二人の間に淡い恋心が芽生え始めた頃。それに気づいた安田時也は、無意識のうちに距離を置こうとした。意図的に彼女を避け、自分の担当プロジェクトすら他人に引き継いだほどだ。

すべては、北野薫と顔を合わせる機会を減らすためである。

当時の彼は、それが『好き』という感情なのだとすら理解していなかった。

だが予想外だったのは、北野薫が仕事では少し鈍感なところがある反面、感情の機微にはひどく敏感だ...

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