第79章

佐倉直樹は驚きと喜びが入り混じった表情を浮かべた。見間違いではない、秋山棠花その人だ。

秋山棠花は訝しげに視線を送り、相手をじっと見つめて誰であるかを思い出した。

彼は藤原光弘の親友、佐倉直樹ではなかったか?

彼がどれほど口の軽い男か、忘れたわけではない。

もし彼に産婦人科に来たことが知られれば、またどんなゴシップが流されるか分かったものではない。

秋山棠花が言い訳を見つけて逃げ出す前に、彼女の真正面に、すらりとした長身の影が忽然と現れた。

まさしく藤原光弘だった。

会社に戻ったはずなのに、どうしてこんなところに?

秋山棠花は無意識のうちに、手に持っていた診...

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