第805章

北野薫が泣き出すと、その場にいた全員が思わず慌てふためいた。

中でも佐藤玲は、ついカッとなってあんなことを口走ってしまった手前、ひときわ焦りを感じていた。

決して彼女を泣かせるつもりなどなかったのだ。

「北野さん、泣かないでよ。さっきはあんなキツい言い方するつもりじゃなかったの、お願いだから泣かないで……」

すっかりテンパってしまった佐藤玲は、思わず呼び方まで変えてしまった。

彼女のことを知る者なら誰もが頷くことだが、彼女は典型的な、強気な相手には徹底的に抗うが、下手に出られると途端に弱くなるタイプだった。

誰かに反発されれば、命懸けで自分の正しさを証明しようとする。だが、いきな...

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