第82章

秋山宏章一家の下心や、その行いについて、藤原光弘が気づいていないわけではなかった。

今まで我慢し、事を荒立てずにいたのは、ひとえに過去の恩義があったからに過ぎない。

しかし、人の貪欲さに底はない。

彼はもう、我慢の限界だった。

「あなたがもういいと言ったら、それで終わりですって?」

秋山柔子は突然、皮肉っぽく笑った。先ほどまでの可憐な様子は瞬く間に消え去り、顔には彼女の素顔が浮かんでいる。

これ以上演じたところで何になるというのか。藤原光弘は彼女に対して一片の情けもかけてはくれない……。

彼女は夢に見るほどこの男を手に入れたかった。

彼をあれほど愛し、彼に相応...

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