第112章 彼女はそんな人じゃない

結局、辻本雨妃は浅井景辰と言い争うのをやめ、彼を深く一瞥すると、そのまま病室を出ていった。

浅井景辰は去っていく背中を見送っても、少しも溜飲は下がらない。むしろ胸の奥に、正体の知れない怒りがどろりと溜まっていくのを感じた。

そして彼は江口准に電話をかけ、低く厳しい声で命じた。

どんな手を使ってでもいい。辻本雨妃がスイスにいた数年間に何があったのか、徹底的に洗い出せ――と。

日野遥が病室に来た時、浅井景辰はベッドに身を預け、窓の外をぼんやり眺めていた。何を考えているのか、表情からは読み取れない。

個室の空気は重く、どこか息苦しい。

日野遥は鶏のスープの入った容器を持ってベッド脇に腰...

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