第156章

彼女の凪いだ瞳に比べ、浅井景辰の視線はますます深く沈んでいった。

なぜだろう。あの平静さが、見れば見るほど胸の奥をざらつかせ、苛立ちを煽る。

数秒、互いに視線を絡めたまま――浅井景辰がふいに両手を彼女の椅子の背に置き、身をかがめてその柔らかな唇を塞いだ。

舌先が乱暴に押し入ってくる。甘く湿った息が、オフィスの空気を一気に濁らせた。

次の瞬間、口の中に鉄の味が広がった。舌先がひり、と痛む。浅井景辰は離れ、指の腹で口元を拭う。指先に滲んだ暗い赤。

辻本雨妃は勢いよく椅子を押して立ち上がった。足首に走る鋭い痛みに眉を寄せる。それでも、弱みだけは絶対に見せない。

彼女は手の甲で唇を乱暴に...

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