第161章

辻本雨妃は淡々と視線を引き、祝杯の席で浅井景辰とこれ以上関わる気はないとばかりに、グラスを手に人波の反対側へ移った。

ほどなくして技術顧問と新素材の話題で盛り上がり、気づけば浅井景辰の存在など頭の隅から消えていた。

その一方で浅井景辰は立花グループの幹部と談笑しながらも、視線だけは勝手に彼女を追ってしまう。

雨妃は背を向けているはずなのに、刺さるような視線が肌に触れて落ち着かない。

やがて浅井景辰が歩み寄ってきた。

「辻本さん」

温和で、どこまでも公的な声。取引先の誰に向けても変わらない、距離のある丁寧さだった。

「実験部のデータは見事でした。今回の協業が形になったのは、あなた...

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