第44章 彼に見られなければいいだけ

辻本雨妃は少なからず面食らっていた。商談は会議室で進めているはずなのに、どうして浅井景辰がここへ出てきたのか。

「浅井社長、お気をつけて」

そのとき、立花時安が別の側からふいに執務室へ入ってきて、にこやかに浅井景辰へそう声をかけた。

浅井景辰はローテーブルに並んだ食べ物へ一瞥をくれ、わずかに目を細める。鼻でひとつ鳴らすと、そのまま大股で去っていった。

浅井景辰がエレベーターへ乗り込むのを見届けてから、立花時安はようやくほっと息をつき、執務室へ入って扉を閉めた。

辻本雨妃は口いっぱいに頬張ったまま、不審そうに彼を見上げる。

「どうしたの。ずいぶん早く終わったのね」

「日野遥さんか...

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