第57章 幸いにも出くわさなかった!

辻本雨妃は、もう彼女にこれ以上構う気もなく、浅井景辰へ視線を移した。

彼は傷を負った腕を押さえていた。白いシャツの袖口は、血でべっとり赤く染まっている。

「その傷、病院でちゃんと手当てしたほうがいいわ。浅井さんも妊娠中なんでしょう? 診てもらわないと。……私、代行を呼ぶわね」

そう言ってスマホを操作すると、ほどなくして手配が完了した。

「代行、あと2分で来るそうよ」

それだけ告げると、辻本雨妃は背を向けた。二人をもう一度見ることもなく、その場を離れる。

何か言いたげに浅井景辰がその背中を見つめた、その時だった。隣の日野遥がふっと力を失うようによろめき、彼は慌ててその身体を支えた。...

ログインして続きを読む